我々が樹立したヒト伊東細胞由来培養細胞株(LI90)に対し作製したモノクローナル抗体(MAI-M6G4)について免疫組織学的、分子生物学的に以下の検討を行った。 MAI-M6G4は伊東細胞や平滑筋関連細胞から産生される細胞外マトリックスを認識する抗体である。ヒト正常組織や線維化病変組織に対する免疫組織学的検討結果(正常組織に比して、肝硬変症、肺線維症、腎硬化症などの線維化病巣においてMAI-M6G4の反応性が明らかに増加)より、MAI-M6G4の認識分子は臓器硬化症におけるクリティカルな分子であることが示唆された。 そこでMAI-M6G4の認識分子同定のため、LI90からcDNA libraryを作製し、大腸菌により合成された蛋白をMAI-M6G4をプローブとしてスクリーニングした。その結果2つの陽性cDNA cloneが得られ、その塩基配列を調べたところ2つのcDNA cloneはいずれも糖蛋白の一種であるテネィシンをコードするものであることが判明した。これらの結果は、テネィシンが臓器硬化病変において重要な細胞外マトリックス成分の一つであることを示すものである。 テネィシン分子にはpre-mRNAレベルでのalternative splicingによりいくつかのisoformが存在するが、我々が得たcDNA cloneにはこれまでに報告されていないsplicingが推測され、この点については現在解析中である。
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