研究概要 |
脳マラリアの病理に関する実験として、ヒトからの材料を得ることが究めて困難であるために、ヒト脳マラリアを再現するモデルとしてサルを用いた系が開発されつつある。本申請研究の成果の一つとして、当部局ではニホンザルとサルマラリアのPlasmodium coatneyiの組み合わせを用いてそれに成功した(c.f.裏面研究発表論文)。 そのニホンザル5頭を実験に供し、マラリア感染に伴う血漿中サイトカイン、及び接着分子の一つと知られているICAM-1の推移を測定した。感染後経時的に採血したところ、TNF-alpha、IFN-gamma値は発症期マラリア原虫寄生赤血球率の上昇に伴い著しい上昇が認められ、IL-6値はそれとは逆に着しい低下が認められた。またICAM-1は重篤な症状が観察された時期に上昇する傾向が認められた(発表準備中)。 またその感染ニホンザルから得たring stage richな赤血球を、in vitroで30時間培養(37°C,5%CO2)したところ、宿主のサルの血清存在下の培養条件で、感染赤血球の回りに非感染赤血球が接着するrosetteの形成が着しかった。走査型及び透過型電子顕微鏡によってそのrosetteを観察すると、感染赤血球の表面に形成されたknobによって非感染赤血球に接着している像が確認された(発表準備中)。 脳症状が認められたサルの脳の病理組織学的観察では、毛細血管内に感染赤血球が血球塊を形成して閉塞している像(Sequestration)が観察された。Sequestrationの率は大脳における各部より、小脳において高かった(発表準備中)。Sequestrationが起こっている部位の免疫組織学的観察により、同部位の血管内皮細胞に接着分子であるICAM-1,ELAMの局在が認められた。VCAMに関しては明らかではなかった。 以上の結果より、接着分子はrosetteの形成、血管内皮細胞と感染赤血球との接着に大きな役割を演じ、原虫寄生赤血球率の上昇、サイトカイン誘導とに伴って、宿主に重篤な脳症状を誘発することがサルのモデルにおいて提示することができた。
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