Yersinia pseudotuberculosis感染症(エルシニア感染症)の臨床症状は、毒素性ショック症候群、猩紅熱等のスーパー抗原性外毒素により引き起こされる疾患の臨床症状とよく類似する。そのため、エルシニア感染症での生体の異常反応にはエルシニア菌が産出するスーパー抗原性外毒素が重要な役割を果たしている可能性が考えられた。この点を明らかにするため解析を行い、以下の成果を得た。 1.想定されたスーパー抗原性外毒素の精製を試みた。ヒト末梢リンパ球に対するマイトジェン活性を指標としてカラムクロマトグラフィーおよび新たに導入したHPLCシステムにより精製を進めた結果、SDS-PAGE上で分子量約21kDaのタンパク質を単一標品として精製する事に成功した。 2.本タンパク質の性質を検討した。本タンパク質のヒトリンパ球に対するマイトジェン活性のT細胞依存性およびMHCクラスII分子要求性等の生物学的な性質から、我々が精製したタンパク質はスーパー抗原としての特徴を有することを明らかにした。 3.精製タンパク質により活性化されるT細胞のTCRVbetaレパートリーを解析した。RT-PCR法による分析の結果、Vbeta3、9、13.1、13.2を持つT細胞が活性化されており、本タンパク質はスーパー抗原性外毒素ある事が証明された。 以上の成果に基づき、現在本毒素タンパク質遺伝子をクローニングすることを試みている。
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