研究概要 |
CD44は、リンパ球活性化、リンパ球ホ-ミング、がんの転移などに関与する細胞表面接着分子である。私たちは昨年度、マウス培養T細胞株CTLL-2の培養上清中に新しいCD44リガンドと考えられるCD44結合物質gp600の存在を報告した。本年度はgp600の生化学的性状を解析し、その精製を試みたので報告する。 (1)gp600の生化学性状;CTLL-2を^<35>S-methionineおよび^<35>S-sulfateで標識した場合、いずれの場合にも標識されたgp600が可溶性CD44で特異的に免疫沈降されたことから、gp600は硫酸化糖を持つ糖タンパク質であることが示唆された。種々の酵素に対する抵抗性を調べた結果、コンドロイチナーゼABCおよびACII処理によって特異的に消化され、SDS-PAGE上で18〜22kDaの低分子量のコアタンパク質と考えられるバンドが出現した。これらの結果からgp600はコンドロイチン硫酸様糖鎖を持つプロテオグリカンであることが明らかになった(Toyama-Sorimachi,et al.,lnt.lmmunol.in press)。 (2)gp600の精製;gp600を同定する目的で、CTLL-2培養上清よりgp600精製を試みた。DEAEイオン交換カラム、ゲルろ過、ヒドロキシアパタイトカラムを組み合わせることにより得られた画分は、CD44結合能を有していた。SDS-PAGEによってこの画分が、14,000〜19,000の低分子量のサブユニットから構成されるタンパク質であることが示唆された。16,000のバンドについてアミノ酸配列を決定した結果、ヒストンH3と完全に一致した。この画分には核酸およびウロン酸が含まれていることから、プロテオグリカンはヌクレオソームとともに回収されていることが示唆された。精製ヒストンはCD44に結合したが、特異性は認められなかった。そこで蛋白変性剤存在下にて再度精製を行い、精製gp600を得た。精製gp600は可溶性CD44に特異的に結合し、CD44陽性細胞でCD44依存性同種細胞凝集を誘導した(投稿準備中)。現在gp600のコンドロイチナーゼ処理によって得られるコアタンパク質のアミノ酸配列の同定およびgp600の生理機能の検討進めている。
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