群馬県(1990〜92年)および福島県(1990〜92年)の市町村別前立腺癌死亡データから年齢調整死亡率を求め、その地理的分布を比較検討した(なお、栃木県については現在検討中である)。 群馬県は、1980年前後の年齢調整死亡率が日本でも最も高かった県のひとつであったが、数年前に死亡率の一時的な低下が見られた全国でも数少ない県である。それに対し福島県は、ほぼ全国平均と同じような変化をしており、この点で両者は対称的である。 調査対象機関の前立腺癌死亡者数は、群馬県が224名(人工10万対の年齢調整死亡率は7.45)、福島県が211名(同じく6.20)であり、その平均死亡年齢は、それぞれ77.9歳と75.9歳で両者の間に有意な差が見られた。同時期の全国データの平均死亡年齢は77.2歳であることから、福島県の平均死亡年齢が有意に低いことが推察された。 保健所管内別の年令調整死亡率の地理的分布を比較してみると、群馬県では以前から報告しているように、重金属による汚染が考えられる渡良瀬川流域の館林、太田地区で以前として死亡率が高いことが目立った。また、館林地区だれでなく、前橋、高崎などの地区でも、死亡率が急増しており、その原因についてさらに検討が必要であろう、なお、市町村別で観察すると、草津などの温泉地域でも依然として高い死亡率を示していた。 一方、福島県では、保原、福島などの県北部から、猪苗代湖周辺の会津若松、郡山、須賀川地区及び、県西側の喜多方、、会津坂下、田島地区で死亡率が高く、県の東西で死亡率が明らかに異なるという興味深い結果となった。特に、銅山があり、栃木県内で死亡率が高かった藤岡地域と接している田島地区及び、そこから流れ出る伊南川や大川の流域や、飯板などの温泉地域とその下流で死亡率が高い点は、群馬県や栃木県に関して、過去に行った報告と類似しており、今後さらに詳しい調査が必要である。
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