研究概要 |
1.飲酒誘発喘息患者の頻度と病態の解析:呼吸器内科外来患者167例に、飲酒に対する反応について聞き取り調査を行った。非喘息患者群123例、気管支喘息患者は45例で、飲酒家喘息患者は35例で、77.1%は飲酒に関連して喘息発作を認めた。これらのうち66.7%は飲酒後30分以内に発作を来たし(early group)、9例は30分以降に発作が出現した(late group)。 2.ALDH2遺伝子の型判定:聞き取り調査をした患者を無作為に選び、ALDH2の遺伝子型を決定した。early groupの77.7%はALDH mutant gene保有者であり、late groupでは全例がnormal homozygoteであった。これらの比率は非喘息患者群のALDH2 genotypeの比率(normal homozygote50%,heterozygote40%,mutant homozygote10%)とは有意に異なっていた。 3.アルコール負荷試験:各genotypeの喘息患者(normal homozygote2例、heterozygote1例、mutant homozygote1例)に経口的にエタノールを0.1g/kg負荷した。normal homozygoteの2例では、飲酒後の血中エタノールおよびアセトアルデヒド濃度は上昇せず、気道抵抗も上昇しなかった。一方、heterozygoteとmutant homozygoteの患者は飲酒後のエタノール濃度は増加しなかったが、10分以内に血中アセトアルデヒドがpeakに達し(前者17.5muM、後者62.1muM)、それに伴って気道抵抗も上昇し(前者6.28L/sec/cmH2O)喘息発作が誘発された。 【考察】飲酒誘発喘息の発生機序は単一ではないが、少なくとも飲酒後早期に出現してくるものはALDH2の遺伝的素因に関連しており、飲酒後上昇する血中アセトアルデヒドが気道収縮の引き金になっていることが証明された。
|