研究概要 |
当科にて切除された30例以上の乳房外パジェット病患者より得られた、ホルマリン固定パラフィン包埋組織を試料として用いた。まず、フェノール・クロロホルム抽出・エタノール沈澱法により、ゲノムDNAを抽出した。次に、得られたDNAを鋳型とし、p53遺伝子の異常が集中して認められるエクソン4から9と、それに隣接するイントロンを含む領域をはさむように数種類のプライマー対を設定して、PCRを行なった。この増幅されたDNA断片に対し、SSCP法で解析した。 まず,p53遺伝子エクソン4内にある塩基配列多型について、ヘテロ接合性の消失の有無を検討したところ、腫瘍部においてヘテロ接合性の消失は認められなかった。 また、p53遺伝子エクソン4から9の領域について腫瘍部DNA中に,点突然変異などの構造異常や正常アレルの欠失は認められなかった。 しかしながら、今回検索した範囲以外のエクソンに構造異常が起こっている可能性は否定できない。また、実験の手技上、SSCP解析時に、高電圧・高電流の状態で長時間電気泳動を行なうため、プレートの充分な冷却を行なう必要があるが、原法で使用されているシロッコ・ファンが非売品のため、扇風機で代用せざるをえなかった。このため冷却が不充分となり、陽性コントロールを用いて繰返し同じ条件下で実験を行なったところ、再現性が悪い結果となった。ぜひ、冷却式電気泳動装置を購入し、検索するエクソンの範囲も拡大して、さらに実験を進めていきたいと考えている。
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