血管内留置カテーテルが血管壁に及ぼす影響を明らかにするため、以下の検討を行った。体重2-3kgの正常家兎の耳介動脈および体重30-35kgの雑種成犬の腸骨動脈にテフロン製、ポリウレタン製カテーテルを留置し、留置後の血管壁および末梢動脈の変化を血管造影写真にて観察した。留置2週間後では、いずれの素材のカテーテルでも、留置血管および末梢動脈に変化は認められなかった。留置5週間後では、若干の血管内腔の狭小化を認める場合があったが、素材による有意な差は認められなかった。次に留置6週間後に屠殺し、カテーテルを留置した動脈壁の状態を組織学的に検討した。いずれの素材のカテーテルにおいても、カテーテルが接触していた血管壁に内膜肥厚を認めたほか、カテーテル留置部より末梢の動脈においても、内膜肥厚像が認められた。 次に家兎耳介動脈に留置した24Gテフロン製カテーテルより、ファルモルビシン 2mg、マイトマイシンC 1mg、シスプラチン 5mgを2週毎に注入し8週後の留置血管の状態を観察した。血管造影では、いずれの薬剤においても軽度(30%以下)の血管内腔の狭小化が認められた。組織学的には、血管壁に浮腫状変化・硝子様変性を伴う内膜肥厚、血管内皮細胞の増生が認められ、これらの病理学的変化は注入薬剤の種類により差は認められなかった。 今回の実験的検討による血管変化は、注入薬剤の化学的刺激による惹起される血管内皮障害のみならず、留置したカテーテル自体にも原因があると考えられた。また、カテーテル留置部より末梢に生じた内膜肥厚の原因としては、留置カテーテルによる乱流のため生じた微小血栓の器質化による変化あるいは、カテーテルの物理的刺激により血管内皮細胞の剥離がおこり末梢に播種性増殖が生じた可能性が考えられた。今後これらの変化が少ないより血管内留置に適したカテーテルの開発が必要である。
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