肝内に腫瘤性病変の認められた患者約30症例に、高速CT装置(横河メディカル社製ProSeed)を用いて経上腸間膜動脈性門脈造影下CT(以下CTAP)を行った。血管造影の手技に準じて大腿動脈から挿入したカテーテルを上腸間膜動脈に留置しCT撮影室に移動、単純CTを撮影して病変の位置を確認した後、カテーテルよりプロスタグランディンE1を注入し、注入30秒後より140mgI/mlの濃度の造影剤を2‐4ml/secの速度で自動注入器を用いて注入した。造影剤注入開始後13‐22秒後より、一回の呼吸保持下(約30秒間)に病変部を連続的に撮影した。撮影条件は、スライス厚10mm、matrix512x512とした。CT画像上、病変部、病変部周囲肝実質、門脈本幹、腹部大動脈に関心領域を設定し、各々のCT値の経時的変化を記録した。病理組織診断が得られたのは、病変摘除術が施行された6症例と、狙撃生検が行われた3症例であった。その内訳は中分化肝細胞癌7例、中分化及び高分化肝細胞癌の合併例2例で、腺腫様過形成並びに再生結節の症例は認められなかった。中分化肝細胞癌では腫瘤は常に欠損像として描出され、腫瘤内の門脈血流は認められなかった。高分化肝細胞癌では最初から最後まで欠損像として描出されるもの(腫瘤内門脈血流なし、病理標本でも門脈域無し)一例、最初から最後まで周囲肝実質と同様に造影されるもの(腫瘤内門脈血流あり、病理標本で門脈域は周囲肝組織と同様に認められる)一例で、CTAPのみでの肝細胞癌の分化度診断は難しいと思われた。
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