先ず、私は今回の研究課題の「ドーパミン受容体D4多型性と精神疾患」の研究を進めるべく、研究方法の開発に着手した。他のG蛋白質共役型受容体との配列類似性のために特異的なドーパミン受容体D4多型性分析法の開発に手間取っている時期に日本を含め世界中の研究結果がすでに報告され始めた。そこで私は計画を一部変更し対象遺伝子を同じドーパミンに関連するドーパミントランスポーターに定めた。 ドーパミントランスポーター(Dopamine Transporter;DAT)は、ドーパミン(Dopamine;DA)ニューロンの神経終末部の細胞膜に特異的に発現するDA再取り込みポンプである。 最近ヒトドーパミントランスポーターのcDNAがクローニングされ、3'-非翻訳領域に40ヌクレオチドの繰り返し配列が存在することが明らかにされた。 今回私らはこの繰り返し配列の検討を行なった結果、繰り返し回数は日本人集団で多型を示すことを証明し、日本人での多型パターンを検討した。この結果、健常日本人における繰り返し回数は7回から11回の分布を示すことを明らかにした。 さらに、DAニューロンの変性疾患であるPerkinson病、DAニューロン系の異常が考えられる精神分裂病の患者集団のDAT多型を正常対照集団と比較検討し、また家族性Perkinson病での解析を行った。これら疾患との有意な相関および家族性Perkinson病での特異な型の検出は得られなかったが、日本人の中で沖縄住民に繰り返し配列の少ない傾向を見い出した。
|