研究概要 |
本研究では、遺伝子工学的手法を用いて抗TSH受容体抗体の認識するTSH受容体の構造を解明するとともに、受容体抗体の抗体結合部位や受容体の分子の三次構造とその生物学的活性の関連より、本疾患の発症機構並びにTSH受容体の情報伝達機構の解明を試みた。 1.TSH受容体分子の構造解明:TSH受容体cDNAクローンの塩基配列を決定し、想定されるアミノ酸配列並びに蛋白の高次構造を解析した。 2.TSH受容体分子の発現:TSH受容体(TSHR)DNAを発現ベクター(pMAM)に組み込み(pMAM‐TSHR)、 Lipofectin(DOTMA)を用い真核細胞(CHO‐K1細胞)に発現させた。 3.変異TSH受容体の作製:Gapped duplex法によるSite‐directed mutagenesisにより、細胞外領域のNグリコシド型糖鎖及びS‐S結合アミノ酸残基をAsn(Asn:77,99,113,177,198,302)よりGlnへ(TSHR‐Mul‐6)、 Cys(Cys:24,29,31,41,390,398,408,569)よりSerへ(TSHR‐Mu7‐9)それぞれ置換変異させた。 4.変異TSH受容体のTSH結合能の測定:変異TSH受容体の発現されたCHO‐K1細胞に対するTSH及び抗TSH受容体抗体の結合能を125I標識TSH及びProtein‐Aの結合により測定した。 5.変異TSH受容体の生物活性の測定:変異TSH受容体の発現細胞にTSH(1nM‐10mM)7抗TSH受容体抗体(1‐10ug/ml)を添加し、細胞内cAMP産生量を指標に刺激活性を測定した。 6.TSH受容体分子と情報伝達機構の解析:変異TSH受容体とTSH並びに抗TSH受容体抗体との結合様式や生物活性の成績より、受容体の情報伝達機構及び抗受容体抗体の作用機序を解析した。 現在、受容体分子の三次構造を解析するとともに真核細胞における発現系において受容体分子の糖鎖と抗TSH受容体抗体との結合様式や生物活性の関連を検討中である。
|