研究概要 |
ABCトランスポーター(別名TAP)は自己抗原、ウイルスの抗原提示に重要な役割を果たす分子でその遺伝子はMHC class II抗原領域に位置する。95人のIDDM患者と75人の正常対照においてTAPとHLA抗原の多型性を検討した。TAPのタイピングはPCR-SSO法で、HLA-DQA1,DQB1抗原のタイピングはPCR-RFLP法で行った。 TAP1、TAP2遺伝子の多型性はIDDM患者と正常対照で有意差はなかった。日本人では西洋白人と同様にTAP1A,TAP2A,TAP2Bが高頻度であった。一方HLA抗原は同じシリーズの対象でIDDMと強い相関を示した。IDDMではHLA-DQA1^*0301(RR2.94)、DQB1^*0501(RR0.21)、DQB1^*0501(RR0.21)、DQB1^*0601(RR0.19)、DQB1^*0602(RR0.17)が減少していた。HLA-DQB1^*0303とTAP2C、DQB1^*0401とTAP2Bの間には正の連鎖不均衡が、HLA-DQA1^*0103とTAP2Aには負の連鎖不均衡が存在した。HLA-DQ抗原をそろえて検討してもIDDM患者と正常対照にはTAP1、TAP2の頻度には差をみとめなかった。 西洋白人においてみられたTAPとIDDMの相関が日本人でみられなかったのは日本人におけるHLA-DQB1*0401とTAP2Bの連鎖不均衡の影響で、IDDMと第一義的に関連するのはHLA-DQ抗原でありTAPとIDDMの相関はDQ抗原とTAPの連鎖不均衡にともなうものと考えられた。
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