研究概要 |
我々は、増殖因子(IL-3またはGM-CSF)依存性非白血病細胞株F-36Pから既知のチロシンフォスファターゼ(PTPase)に保存されている領域をプライマーとしてPCRを行い、3種の新規PTPaseDNA(F36-12,F36-14,F36-15)を単離した 。そのうち白血病細胞株及びマウス臓器中で最も発現の多いF36-12を対象として解析を行った。F36-12は胎盤でも発現が見られ、mRNAは約8kbと5.5kbの2種類の転写産物が認められた。胎盤のcDNAライブラリーからF36-12cDNAをプローブとしてスクリーニングを行い、翻訳領域全域を含むと思われる約5kbのクローンを得た。一次構造の解析の結果、F36-12は膜貫通型のPTPaseであり、細胞内に1つのPTPaseドメインを持ち、細胞外領域は10個のファイブロネクチン(FN)類以の繰り返し配列を持つ、いわゆるtype-IIIのPTPaseに属する事が判明した。Type-IIIのPTPaseは現在までHPTPbeta1つが知られているのみで、我々のクローンは第2番目である。大腸菌で発現させたF36-12タンパクを抗原として抗体を作成し、F36-12を発現しているヒト白血病細胞株でウエスタンブロットを行ったところ、220-250KDaのタンパクが確認された。胎盤のcDNAライブラリーから得られた約5kbのF36-12cDNAをCOS細胞にトランスフェクトし同じ抗体でウエスタンブロットを行ったところほぼ同じ大きさのタンパクが確認されたため、得られたcDNAは翻訳領域全域を含んでおり、抗体はF36-12タンパクを特異的に認識している事が明らかとなった。今後、F-36Pの増殖因子からの情報伝達機構におけるF36-12の役割を解析すると共に、F36-12の染色体上の位置を決定し、癌細胞で有意に欠失が見られる部位であるかどうか、また癌化との関連においても検討していく予定である。
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