研究概要 |
(1)Tenascin ホモ欠損マウスの骨髄・脾臓および胸腺を病理組織学的に検索したが,正常マウスに比して形態学的相違・変化を認めなかった。(2)Tenascin ホモ欠損マウスを用いた初代骨髄長期培養系を樹立し,BDF1マウス由来コントロールとの造血動態の相違につき比較検討を行った。骨髄球系細胞分化を主に支持するDexter培養系およびリンパ球系分化を主に支持するWhitlock-Witte両培養系において,コントロールに比して早期(2-10週)で優位の造血支持能低下が認められ,Tenascin ホモ欠損マウスのin vitro での造血支持能の質的相違が示されるとともに,造血現象におけるTenascin 分子の関与が示唆された。(3)Tenascin ホモ欠損マウスの骨髄及び脾臓由来間質細胞初代培養系を樹立した。これら初代間質細胞の細胞外マトリックス糖蛋白(fibronectin,laminin)産生を,BDF1由来間質細胞と比較検討したが,過剰産生等の代償機能発現を認めなかった。また,Tenascin遺伝子相同組み換えのマーカーとして組み込まれた遺伝子産物beta-galの発現が確認され,in vitroにおけるTenascin相同組み換え部位の転写活性が示された。さらに,この系より付着性単細胞のみを分離後,間質細胞のみをクローニングし,各々数クローンの株化細胞を得た。現在,これら株細胞をfeeder layer とし骨髄非付着細胞と共培養を行い,血液細胞に対する造血支持能を検索中であり,さらに既に我々が樹立した,培養条件で異なる血液細胞分化を支持しうる多支持性マウス骨髄由来間質細胞株との質的相違についての比較検討を開始している。
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