研究目的:心保存における保存液の電解質組成、緩衝液、浸透圧の培養心筋細胞に与える影響について検討する。 研究方法:新生仔ラットの心室筋を用い、コラゲナーゼを使用し、心筋細胞を単離する。単離心筋細胞をMCDB-107培地を使用し4日間培養し、培養心筋シートを作成する。この細胞シートを保存用検体として用い、各種電解質組成液(細胞内液型、中間型、細胞外液型)、各種緩衝液(燐酸緩衝液、重炭酸緩衝液、HEPES緩衝液)、各種浸透圧の保存液を用い、低温保存し、心筋細胞機能、心筋細胞形態、細胞膜安定化に与える影響を検討する。 研究結果: 1)電解質組成:未熟心筋の低温保存に於いては、従来より報告されている結果とは異なり(細胞内液型が優れているといわれていた)、細胞外液型組成を有する保存液(乳酸加リンゲル液、MCDB-107培地等)が細胞機能保持、細胞膜安定化という点で優れていた。 2)緩衝液:燐酸緩衝液及び重炭酸緩衝液は、低温環境下の未熟心筋に対し、細胞障害性(細胞機能障害及び細胞膜障害)に作用したのに対し、HEPES緩衝液は細胞保護的に作用した。保存液に用いる緩衝剤としては、HEPES緩衝剤が有用と考えられた。 3)浸透圧:主に血清を用いてこう質浸透圧について検討したが、10%以上の濃度では細胞障害がみられ至適濃度は2%前後の低濃度であった。また無血清の状態でも十分保存可能であった。未熟心筋の低温保存に際しては、膠質浸透圧の維持は重要な問題ではないと考えられた。
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