研究概要 |
軸流ポンプを血液ポンプとして用いる際、重要な技術要素は溶血の軽減と軸のsealingである。今年度の研究を通じて我々は軸流ポンプのsealing機構として動圧軸受けを開発した。本軸受けはセラミック材から成り、rotorとstatorは10mumのギャップを隔てて摺動し、対向する面の一方に、深さ10mumの溝が回転に応じて動圧を発生するようデザインされている。動圧とは狭い間隙にてrotorとstatorを摺動させる際、生ずるずり応力を、周方向に形成した溝により中心部へ集中させて得られる圧力をさす。この動圧によりrotorが高速回転する際、rotorとstatorは非接触的となる。この動圧軸受けは構造がsimpleで、軸受けそのものが耐圧防水シール機構をかねている。またrotorとstatorはセラミック材から成り、しかも非接触的に回転するため耐磨耗性は極めて高く、長期にわたって安定した高速回転が可能で、騒音や熱発生も低レベルに抑えることができる。このsealの耐圧能は軸の回転数に応じて上昇し、生理食塩水を用いた実験では7000rpm-300mmHg,10000rpm-400mmHgの耐圧能を得た。さらに、動圧発生溝のデザインを左右アンバランスにすることで軸受けそのものにポンプ機能を持たせることが可能となった。試作した一方向性動圧軸受けでは40ml/hの流量と、3000mmHgの吐出圧を達成した。これにより植え込み型補助装置実現のための重要な技術要素の一つである長期使用可能な軸受け開発にめどがついた。
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