ウサギの大腿動脈の内腔に径1.0-1.5mmのラミナリアを挿入し、内腔拡大の経過を観察した。挿入したラミナリアの太さも関与したが、5分で1.8-2倍、10分で2.5倍、15分で3倍、30分で4倍、60分でも4倍あった。ラミナリアは抜く際に、血管の内膜が一緒に抜ける現象は認めなかった。1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍の内腔拡張モデルにおいて、引く抜いた後に内腔を30分てい度観察すると、1.5および2倍拡大モデルでは再縮小したが、内腔を2.5倍以上拡大したモデルでは内腔の縮小はほとんど認められなかった。したがって、拡張後の再縮小を防ぐには10分以上待つ必要があり、また30分以上待っても、拡張率は変化しないと考えられた。しかし、2.5倍以上に内腔を拡張したところ、血管長が短縮してしまう現象が観察された。2.5倍拡張モデルについて画像解析で内腔面積を計測したところ、拡張前の4055pixcelが拡張後は30193pixelであり、動脈内腔面積は7.46倍の拡張が得られていた。拡張モデルの組織は、内膜では内皮細胞とそれを裏打ちする薄い結合組織の剥離がみられた。しかし、内弾性板は特有の波形が平坦化していたが、ほぼ完全に連続性を保ち、全体の基本構造を保っていた。また、中膜、外膜は断裂を認めず、基本構造は保たれていた。血管吻合モデルについて、当初は、拡張した血管同士をそのまま端端吻合する予定であったが、2.5倍以上に内腔を拡張したところ、血管長が大きく短縮してしまい、両血管断端間は相当の距離が開いてしまうという事態が生じた。これを無理に引き寄せて吻合を行ったところ、開存率はきわめて不良であった。したがって、両血管断端間の距離を埋める必要があり、改良モデルとして拡張血管断端間に静脈移植を行ったモデルを作成中です。
|