ヒト関節症関節軟骨より得られた軟骨細胞を用いてin vitroで成長因子を投与して、その軟骨基質蛋白産生、あるいは軟骨破壊に関連するサイトカインの増減を遺伝子レベルにて検討した。 細胞培養 ヒト関節軟骨より採取した関節軟骨細胞は培養において、ラット軟骨より培養が困難であったが、播種において細胞密度を3x10^4個/cm^2とすると可能であることが解り以下この条件で培養を行った。 関節症軟骨細胞におけるII型コラーゲン産生に対する成長因子の影響 正常関節軟骨及び関節症関節軟骨を手術時に採取し、コラゲナーゼ処理により細胞を遊離し上記の濃度にて播種することにより細胞培養を行った。これらの細胞に成長因子の一つである塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を作用させ、軟骨特異的基質であるII型コラーゲンメッセンジャーRNA(mRNA)の発現をノーザンブロット法を用いて検討した。この培養条件下ではbFGF100ng/mlの濃度において正常軟骨細胞はII型コラーゲンメッセンジャーRNA(mRNA)を20%減少させたが、一方関節症軟骨細胞においては70%の減少を示した。 関節症軟骨細胞におけるIL-1の発現 正常関節軟骨及び関節症関節軟骨を手術時に採取し、コラゲナーゼ処理により細胞を遊離し上記の濃度にて播種することにより細胞培養を行った。これらの細胞にbFGFを作用させ、培養細胞よりRNAを抽出した。このRNAより逆転写によりcDNAを作製し、PCR(polymcrasc chain reaction)法を用いてサイトカインIL-Iの発現を検索した。bFGFを作用させない状況において関節症軟骨細胞は正常軟骨細胞より多くのIL-ImRNAを発現していた。さらにbFGFを作用させることでIL-ImRNAの発現は、関節症軟骨細胞において、より増強した。 これらのことは、関節症関節軟骨細胞が正常関節軟骨細胞と異なる動態を示すことを示唆している。また、関節症関節軟骨においてその変形のメカニズムにIL-Iが関与していることを示している。
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