研究概要 |
本研究費にて購入した電気刺激装置を利用して、平成5年6月以来、NLA法を用いた椎間板ヘルニア10例術中に脊髄刺激筋誘発電位を計測している。その結果、この麻酔法下には同電位は比較的安定した振幅で計測でき、かつ、スパーテル等での軽度の硬膜管圧迫によって多相化するため、今後ヒト術中の運動路のモニタリング法として臨床応用が可能であることが示唆された。一方、セボフルエンをはじめとする吸入麻酔薬を一時的に吸入させた場合には脊髄刺激筋誘発電位の振幅は吸入後15分以内に完全に消失した。なお、この結果は第7回日本整形外科基礎学術集会で発表した(平成5年10月16日、於松本)。また、NLA麻酔下の術中脊髄刺激誘発電位の計測において下肢各筋から計測される正常電位を比較するために、腰椎椎間板ヘルニア患者の健常側の下腿三頭筋、前脛骨筋、大腿四頭筋からの記録を行った。その結果前脛骨筋や下腿三頭筋からの計測では巣相性の比較的明瞭な50-100muvの電位が計測できたのに対して、大腿四頭筋では隣接する筋活動電位が混入するため多相性の振幅計測困難な電位しか計測できなかった。このため我々は術中脊髄刺激誘発電位の計測によって、術中脊髄運動機能のモニタリングのみならず、前脛骨筋や下腿三頭筋からの電位計測によって、腰椎手術中のL5,S1 rootを中心とした機能障害による術後下垂足などの根性運動機能麻痺もモニタリングできるのではないかと考察した。なお、この結果は第82回中部整形災害外科学会(平成6年3月31日、於和歌山)に報告する予定である。
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