重症疾患患者、高齢者への手術適応の拡大につれ、手術および麻酔にともなう生体への侵襲の程度、またその防御機構を解明することは周術期管理を安全に行う上での重要項目となってきている。麻酔や手術は種々の内因性メディエーターの産生を刺激し、これらのメディエーターは侵襲に対する反応を様々な臓器、様々な細胞レベルで誘発すると考えらている。 対象:大分医科大学手術部にて、術前に研究の主旨に同意が得られ、肝切除術を受けた成人患者7名を対象とした。また心臓手術患者5名を対象手術症例とした。肝切除術患者においては動脈血、門脈血、肝静脈血において採血を行いストレス時の肝臓の役割についても調べた。 結果:インターロイキン6については肝切除術患者ではコントロールでは動脈血66.1±13.3pg/ml、門脈血102.9±32.7、肝静脈血79.3±12.1であったものが肝切除後では、動脈血420.1±133.3、門脈血651.9±185.5、肝静脈血490.1±151.9の変化を示していた。これに対して対象手術の心臓手術患者では麻酔導入後動脈血で50.2±10.1から手術終了時動脈血190.5±50.2と変化していた。 考察および今後の展開:新しいストレスの指標とされるインターロイキン6の変化では心臓手術に比べ、肝臓手術がよりストレスが強く、またこの原因としては肝流入部血行遮断にともなう腸管の一時的虚血が最も考えられた。今後さらに症例を重ね、細胞内ストレス応答としての熱ショックプロテイン70の変化について検討を加えていく。
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