知覚神経に存在するといわれる神経ペプチドの一種 substance P(SP)は、最近の研究で炎症と関することが明らかになってきた。そこで手術時にえられたヒト膀胱粘膜に対して、抗SP抗体を用い免疫染色をおこなった。SP陽性神経はヒト膀胱の粘膜固有層に豊富に存在していた。電顕で観察するとSP陽性神経終末のうち89.6%は自由終末であり、そこには大型の有芯シナプス小胞と小型の無芯シナプス小胞が混在していた。またSP陽性終末の一部はシュワン氏鞘を欠いており、SPがこれらの部位から放出されている可能性が示唆された(Hisiotochemistry、印刷中)。 次に、膀胱炎を呈しているヒト膀胱粘膜に対して種々の抗体を用いて免疫染色をおこなった。膀胱炎では、リンパ球が多数浸潤しておりリンパろ胞様にリンパ球が集積している部位がよく観察される。このリンパろ胞様にみえる部位に交感神経、peptide histidine isoleucine 陽性神経neuropeptide Y 陽性神経が認められ、これらの神経と免疫系との関連が示唆された。SP陽性神経については現在検索中である。今後、神経とリンパ球表面マーカーとの2重染色や電顕による観察を予定している。 動物実験では、現在ラットやネコを用いて種々のアジュバントを膀胱内に注入し、炎症の時期により膀胱粘膜内神経がリンパ球などの免疫担当細胞とどのようにかかわっているのかを光顕および電顕で観察している。
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