[1]基礎的検討 1)正常PBMCにMo sup.を添加し培養すると、T細胞の著しい減少及び単球の著しい増加を認めた。 2)Mo supを自己腫瘍細胞に対するCTL誘導のinduction phaseに添加すると、CTLの細胞増殖抑制(40〜80%)及び細胞障害活性抑制(50〜80%)を認めた。 3)T細胞活性化を強く抑制するcytokineであるrecombinant-Transeforming growth factor beta(r-TGFbeta)をCTL誘導のinduction phaseに添加すると、強い細胞増殖抑制(50-60%)及び細胞障害活性(15-25%)を認めた。 4)Mo sup.によるCTL抑制効果は、抗TGFbeta抗体の同時添加により、細胞障害活性の軽度の回復(5-10%)と、細胞増殖能の著しい回復(70〜80%)を認めた。しかしながら抗TNF抗体同時添加ではいずれも影響を受けなかった。 5)Mo sup.添加により、CTL活性の得られなかった培養後のT細胞を、再度CTL誘導のinduction phaseに添加し培養すると、CTL活性を著しく抑制した。 [臨床的検討] 1)婦人科悪性腫瘍について、初回治療後の単球とT細胞の比率をlow cytometryを用いて経時的に判定すると再発を認めない群54例中46例(85.1%)がMo/T比は1.0以下で推移し、再発群では、13例中10例(76・9%)にMo/T比1・0以上と比率の逆転を認めた。Mo/Tが1.0以上となった時期は、腫瘍マーカーの上昇も含めた臨床的再発徴候出現の3・3±2.8ケ月前であった。 2)Mo/T比が1.0以下では、強いCTL活性化が可能(30〜60%)であるがMo/T比1.0以上では活性化は極めて困難(0-5%)であった。 3)再発徴候を認めないでMo/T比が1.0以上となった時点で化学療法を施行した群は、Mo/T比は再び1・0以下に回復し、再考を認めなかった。 4)以上の結果は癌種間で有意差を認めなかった。 [結論]今回のCTL活怯化抑制機構の基礎的検討から、進行癌患者で末梢血中に増加する単球由来液性因子は、CTL誘導活性化に対し直接的抑制効果を有し、この因子はmonoclonal抗体による阻害試験によりTGFbetaが関与していることが強く示唆された。また、以上の検討成績をもとに作製したMo/T比を用いた臨床的検討から、宿主の免疫状感を強く反映しており、腫瘍マーカーとは異なった、宿主免疫能の指標となる可能性を明かにし、癌再発の臨床的予知にも有用であり、再発抑制の治療開始タイミングが存在することを明らかにした。
|