本年度の実験は大きく2つに分けられる。 まず半円形の模擬眼を想定しその中を多数の三角形の要素に分けた。すなわち有限要素法にあてはめ、模擬眼球の円め中心が回転軸になるように回転運動させた場合のそれぞれの部分の水の動きをコンピューター上でシュミレートした。コンピューターを利用する利点は一度シュミレーションができればその後は、多様な条件を簡便に設定できることで、例えば内陥bucklingの形状を種々変化させることにより、どのような位置には、どのような形状のbucklingが流体力学的に最適であるかを知ることができる。その結果眼球運動時、水の流れは半円の中央部を回転軸として周辺に近いほど速く流動する振幅回転運動を示した。この結果無図の中の物体は次第に半円の中央部から周辺部に移動することが示された。すなわち網膜が一切の硝子体などからなる牽引力を受けなければ網膜は自然に復位することを示したわけである。この移動力は流体の角速度が大きいほど大きく、同一条件下では周辺に近いほど大きな力が作用すると考えられる。ところが半円の隅に近いほうでは乱流により中央部への力を受けるものがあることも判明した。 これらの実験を次に行なわれた眼球を模したアクリル製の水理模型を用いた実験結果と比較した。この模擬眼実験では比重が1の浮玉を入れ水の動きが視覚的に捉えられるようなっており、これにより眼内液の運動が実際に観察できるようにした。観察記録用として模擬眼の上方同軸上にビデオカメラを取り付け、現像をフィルム上に記録し、浮玉の位置を座標軸上にプロットすることにより観察結果を記録した。この結果両者の実験結果は全く一致したものであった。
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