研究概要 |
歯周ポケット内の細菌構成を検索したところグラム陽性桿菌のEubacterium属細菌種(E.timidum,E.U-group,E.nodatum,E.brachy)が多数分離され、特に性状検査での反応性に乏しい糖非分解性の細菌種が多数を占めたことから、それらの細菌種についてさらに性状を明らかにするため、以下の4項目について検討した。 1.従来の記載と異なる性状を示した分離株(Eubacterium U-group)についてSDS-PAGE泳動パターン、DNA相同性を検索し、新菌種Eubacterium saphenumとして報告した(Int.J.Syst.Bacteriol.Vol 43 No.2 1993)。その際、類似した菌種との性状の違いを明示した。本菌種は分離菌総数596株中19%を占め、歯周疾患との関連が検索課題となった。その他の未同定株Eubacterium S-group,M-groupについても検索中である。 2.糖非分解性のEubacterium属細菌種(E.timidum,E.nodatum E.saphenum,E.brachy)についてAPIシステムでペプチダーゼ活性を検索したが、調べた範囲では鑑別点となる酵素活性は見出せなかった。 3.組織破壊があり、血清の存在する歯周ポケット内という環境を踏まえて、HPLCによりアミノ酸を基質とした代謝産物の検出(電導度検出器を購入)を行った。従来のガスクロと比較してケト酸の検出が容易となり、幾つかの知見を得つつある。 4.歯周疾患と上記の細菌群との関連を調べる目的で患者血清中の抗体価(量)をELIZA法にて測定する系を確立中である。 以上の結果(特に項目3)から、歯周ポケット内でこれらの糖非分解性Eubacterium属細菌種がいかに生息しているか、具体的には生育に関与するアミノ酸代謝についての検索が必要であると思われた。
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