研究概要 |
1.マウス骨芽細胞株MC3T3-E1において、代表的な神経成長因子ファミリー(ニューロトロフィン)であるNGF,BDNF,NT-3が発現していることを遺伝子および蛋白質レベルで明らかにした。mRNA発現量としてはNGFが最も多く、RT-PCR法による定量においては多い時でアクチンの約15%であった。ニューロトロフィンの発現量はMC3T3-E1の培養経過に伴って変化し、対数増殖期と骨細胞分化期において増大した。in vivoで骨形成を誘導するTGF-betaを培養系に添加すると、ニューロトロフィンの発現量は一過的に増大した。またMC3T3-E1の培養上清には、ニューロトロフィンが約0.3ng/ml存在し(イムノブロットによる定量)、抗NGF抗体を結合したアフィニティーカラムによる吸収実験によって、この培養上清中に存在するPC12D細胞に対する突起伸長誘導活性がほとんど吸収されることも明らかとなった。 2.MC3T3-E1において発現される新規なニューロトロフィンを検索するため、既知のニューロトロフィンのDNA塩基配列間で共通性の高い部分においてプライマーを作製し、RT-PCRによって増幅を試みたところニューロトロフィンDNA断片の混合物が得られた。この断片の塩基配列を決定中であるが、現在のところNGFおよびNT-3の変異体が見つかっている。 3.MC3T3-E1におけるニューロトロフィン受容体遺伝子(trkファミリー)の発現の有無についてはtrk共通プライマーを用いたRT-PCR法によって解析を行っている。現在のところ、無刺激状態でtrkより約100bp長いDNA断片の増幅が確認されており、その塩基配列を決定中である。
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