beta-作動薬であるイソプロテレノール(IPR)で10あるいは30分間の前処理を加えた場合にラット耳下腺からの同濃度のIPRによるアミラーゼ(A)分泌にそれぞれ見られるSuopersensitivity(S)あるいはDesensitization(D)の機序をbeta-受容体・アデニル酸シクラーゼ系の共役因子であるGTP結合蛋白質の動態との関連において追究し、下記の成果を得た。 (1)耳下腺細胞膜のGTP結合能を[^<35>S]GTPgammaSを用いた結合実験で調べると、IPRによるA分泌にSが見られる時にはアデニル酸シクラーゼに対して抑制性に作用するGi蛋白質(Gi)のGTPとの結合能が対照に比して低下し、逆にA分泌にDがみられる時にはGiのGTPとの結合能が対照に比して増大していた。アデニル酸シクラーゼに対して促進性に作用するGs蛋白質(Gs)のGTPとの結合能はA分泌のSおよびD時にともに対照に比して変化は見られなかった。 (2)耳下腺細胞膜のGTP結合蛋白質のADP-リボシル化能の変動とA分泌のSあるいはDとの関連性を調べると、GiのADP-リボシル化能はA分泌のS時に対照に比して低下し、D時に対照に比して増加していることが示された。GsのADP-リボシル化能にはA分泌のSおよびD時ともに対照に比して変動は見られなかった。 (3)耳下腺からのA分泌にSあるいはDがみられる条件下で調整した耳下腺細胞膜蛋白質をプロテインキナーゼA(PKA)の存在下でりん酸化した後、GTP結合蛋白質とくにGiのADP・リボシル化能の変動を調べた。その結果、A分泌のD時にみられたGiのADP-リボシル化能の増大は全く認められず、対照に比して差異は認められなかった。また、A分泌のS時にみられたGiのADP-リボシル化能の抑制はりん酸化の影響を受けなかった。 (4)耳下腺細胞膜蛋白質をアルカリホスファターゼで脱りん酸化した後、GiをADP-リボシル化能を調べると、脱りん酸化の程度に応じてADP-リボシル化能は著しく増強された。 従って、本研究においてbeta-受容体を介する耳下腺腺房細胞の応答にGiの機能の変動、とくにこの蛋白質のリン酸レベルの変動によるADP-リボシル化能の変動が密接に連関してることが明らかにされた。
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