歯頚部磨耗症の発症頻度は高いにもかかわらず象牙質の微細形態は明確ではなく、その修復法についてもレジン修復が多用されているが辺縁封鎖性等に問題点があるのが現状である。本研究では、歯頸部磨耗症象牙質の微細形態を検索するとともに、その修復法についても検討した。象牙質生検用中空ダイヤモンポイントを用いて歯頸部磨耗症象牙質より、直径約0.8mm、高さ約0.8mm生検試料を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて試料表面を観察した結果、管間象牙質は極めて滑沢で、大多数の象牙細管が微小石灰化物質により封鎖されていた。その封鎖細管数の全細管数に占める割合は平均して93.6%であり、また開口象牙細管の平均直径は1.3mumであった。この生検試料表面に2種類のボンディングシステム、KB-110(クラレ、KB)およびインパーバボンド(松風、IB)のプライマーをそれぞれ塗布し、SEMにて観察した。IBプライマー処理した試料表層では、開口象牙細管がほとんど存在せず管間象牙質に微小タグが認められる領域と、スメア-層に類似した被覆層が出現する領域とが認められた。KBプライマー処理した場合、70%以上の細管が開口している領域と、プラグ状構造物が細管内に出現している領域のほかに、被覆層が出現している領域も存在していた。プライマー処理方法は、各システムにより大きく異なっており、IBプライマーでは磨耗象牙質本来の微細形態を保持して管間象牙質に微小タグが認められたのに対して、KBプライマーではその微細形態が大きく変化し象牙細管開口領域のほか細管内腔に新しい反応生成物が出現する領域が認められた。
|