抜歯後の大量の局所性骨吸収は歯槽骨に特徴的なものであり、その吸収を制御することは、インプラント体や義歯等の補綴物を長期間安定した状態で機能させるために有効な手段のひとつであると考えられる。しかしながら、これまで抜歯窩の治癒過程や、顎堤の変化について経時的、形態学的に検索した報告はみられるが、歯槽骨の吸収に関与する種々の因子の働きをも含めて、その詳細は明らかになっていない。さらに歯槽骨の吸収を抑制する方法や、失われた歯槽骨を再生する方法などについても未だ確立したものはない。 そこで、顎堤の吸収を制御することを目的とし、その基礎データとなる顎堤の経時的変化について検索を行った。実験動物として、5週齢、雄のS.D.系ラットを用いた。全身麻酔下にて、上顎右側第2、第3臼歯を抜去し、抜歯窩の治癒した後の顎堤について、このうち特に歯槽骨の経時的変化を組織学的に検討した。 抜歯後の顎堤は抜歯窩が治癒する4週目以降、早期に特に低くなる傾向を示した。組織学的には、歯槽骨表層での骨吸収像が4週から8週にかけて特に頬側部で認められ、これが顎堤の形態変化に影響するものと思われた。また同時期、表層からやや内部では活発なリモデリングが認められ、これは表層の吸収像に対応していると考えられた。今後、このような抜歯窩治癒後早期におこる歯槽骨表層での骨吸収を抑制する方法について、検討を加えていく予定である。
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