対象症例:1)両側性顎関節に異常を認めない2例、2)片側性顎関節症6例、3)両側顎関節症5例、計13例26関節で、各被験者に対しDynamic MRI撮影を行った。 実験方法および分析法:Dynamic MRIは、下顎を切端位に固定した状態でマグネビスト(Gd‐DTPA)0.2ml/kgを静脈内投与し、直後より30秒ごこにSPGR法にて両側下顎頭矢状断撮像を行った。得られた画像において、関節円板の後方の円板後部結合組織相当部に直径2.5mmの関心領域を設定し、同部の平均信号強度を測定した。Dynamic MRI施行前に得た関心領域の平均信号強度に対するDynamic MRI施行後の平均信号強度の比を信号の増強度とした。 結果:信号の増強度の経時的変化をみると、大別して徐々に信号の増強度が上昇するかまたはほとんど上昇しない群(I群)15関節と、30秒〜3分にかけて急激な上昇を示す群(II群)11関節に分類できた。I群とII群の間には、円板の前方転位や症型分類などの要因に左右される傾向は見られなかった、しかし、顎関節部の疼痛について検討すると、疼痛のない14関節中13関節にI群が、疼痛を有する12関節中10関節にII群が見られ、疼痛を有する顎関節に信用の増強効果が有意に認められることが分かった、また。II群で疼痛を有する10関節において、疼痛の程度が強いほど信号の増強度が上昇する傾向と、疼痛発症からの期間が短いほど信号の増強度の上昇する速度が早くなる傾向が見られたが、症例数が少なく有意差を見出すには至らなかった。これらの点については更に症例数を重ねて検討する必要がある。
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