合成ハイドロキシアパタイトを歯肉線維芽細胞で被覆して新たな移植材料を開発するために、10歳の男子の正常歯肉線維芽細胞を24穴マルチウエルプレートで顆粒状(直径約300mum)とそれで構成されるブロック状(約3mm大)の2種類の合成ハイドロキシアパタイトと共に静置培養し、線維芽細胞の付着状態についてSEMで観察した。用いた線維芽細胞は3代継代したものであり、培養開始時の細胞濃度は5.0x10^4/ml、1.0x10^5/ml、5.0x10^5/ml、1.0x10^6/mlで、それぞれについて3日、7日、14日、21日培養した。また、FGFの影響をみるために basic FGF(bFGF)を10ng/ml、100ng/mlで培地に添加し、ブロック状の合成ハイドロキシアパタイトと共に培養開始時の細胞濃度が 50.x10^4/mlで、3日、7日、10日、14日培養し、bFGFを添加しなかったものと付着状態を比較した。さらに、bFGFを10Nng/ml添加して6日間培養した場合の線維芽細胞の細胞数を添加しなかったものと比較した。その結果以下のことがあきらかとなった。ブロック状および顆粒状の合成ハイドロキシアパタイト共に、(1)培養開始時の細胞濃度と線維芽細胞の付着状態には差がみられず、歯開始時の細胞濃度を多角しても、線維芽細胞の付着が促進されないこと、(2)14日間培養すると合成ハイドロキシアパタイトの顆粒の1つ1つが判別できない程度に線維芽細胞が密に付着しており、移植材として用いるためには 14日間程度の培養期間を必要とすることがわかった。(3)ブロック状合成ハイドロキシアパタイトのマルチウエルプレートの底面に接触している面にも他の面と同様な線維芽細胞の付着が認められ、静置培養により線維芽細胞をブロック状合成ハイドロキシアパタイトの全面に付着させることが可能であった。(4)bFGFを10ng/mlを添加した培地で6日間培養すると、添加しなかったものに比較して細胞数が約1.4倍に増加した。しかし、bFGFを10ng/ml、100ng/mlを添加した培地を用いて線維芽細胞の付着状態を調べてみると、添加しなかったものと差がみられず、bFGFで細胞の増殖速度を速めても線維芽細胞の付着が促進されないことがわかった。(5)顆粒状の合成ハイドロキシアパタイトでは1つ1つの顆粒が線維芽細胞によって結合してしまい、移植材として用いるにはブロック状のものに比べて操作性が劣ると思われた。現在は、この新しい移植材料としての歯肉線維芽細胞で被覆した合成ハイドロキシアパタイトの臨床応用に向けて準備を進めているところである。
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