生理活性物質(薬物を含む)の作用発現や体内挙動には、血漿タンパク質等の生体成分との相互作用が深く関与しており、その相互作用の評価は重要な課題である。そこで本研究では、先端分析法の原理をキャピラリー電気泳動に取り組むことにより、極微量の試料量で簡便に生理活性物質と生体成分間の可逆的相互作用の結合を評価できる新しい分析法を確立した。 血漿タンパク質であるalpha1-酸性糖タンパク(AGP)と塩基性薬物の混合溶液をモデル試料に用いた。AGPは塩基性薬物の血漿中タンパク結合に深く関与することが知られている。 80nL程度の試料溶液を泳動用キャピラリーに直接注入した。キャピラリー内面にタンパク質が吸着することを避けるために、内面を新水性ポリマーで予めコーティングしておいた。次に、キャピラリー両端に電圧を印可すると、正電荷を有する塩基性薬物と負に帯電している血漿タンパク質は反対方向に移動した。その結果、薬物は帯状に溶出されて、先端分析に原理の基づき、その高さから非結合型薬物濃度が求まった。また、総薬物濃度は既知であるので、統合率を計算できた。このデータをScatchard解析することにより、結合パラメーター(統合定数や結合部位数)を評価できた。得られた結合パラメーターは文献値と良好に一致した。 以上の結果から、本法により非結合型濃度を極微量分析でき、生理活性物質と血漿タンパク質のような生体成分との結合の評価に適用できることが確かめられた。本法は特に、AGPのように高価で入手困難な生体成分の結合研究のように微量分析が望まれている研究分野に大きく貢献するものと期待される。
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