研究概要 |
1.初代神経培養細胞におけるリセプター脱感作現象の動態解析を試み、以下の実績を得た。 (1)抗リセプター抗体は、その特異性の問題からアミノ酸配列のN末端側に対するものが多いが、このN末端は細胞膜の細胞質側に突出している。したがって、生きた細胞での抗体の感作を行うためには細胞内への注入が必要である。そのため、まず細胞内へのマイクロインジェクション法の確率を試み、細胞内への抗体あるいは酵素蛋白質の注入を可能にした。 (2)次に、金コロイドで標識した抗ドーパミンD_2リセプター抗体をこの方法により細胞内へ注入したが、細胞膜への特異的な結合が認められなかった。その原因が抗体の特異性の低さにあると考え、現在、より特異性の高い抗体の作成を進めている。 2.リセプター脱感作と関係の深い伝達物質の開口放出の動態解析をラット肥満細胞系であるRBL-2H3細胞を用いて行い、以下に示す新知見を得た。 (1)RBL-2H3細胞における抗原抗体刺激による開口放出には各種プロテインキナーゼCアイソザイムの内、betaとdeltaが特異的に関与する(J.Biol.Chem.268.1749-1756,1993;268.2280-2283,1993)。 (2)プロテインキナーゼCgammaは他のプロテインキナーゼCアイソザイムの働きを特異的に抑制し、その結果プロテインキナーゼCbetaあるいはdeltaによる開口放出を阻害する(Molecular Biology of the Cell in press)。 (3)高分解能ビデオ顕微システムを用いた解析の結果、RBL-2H3細胞における個々の開口放出の過程は33msec以下の速い反応であること、さらに、細胞刺激の種類に応じて、異なる情報伝達系を経由し、異なる時間経過で開口放出が引き起こされること、等が明らかになった。(J.Immunol.in press;J.Cell.Biol.投稿準備中)。
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