研究概要 |
1.基礎理論 脳電磁図による電流源局在推定を行う場合,脳磁図に比べて脳波ではヒト頭部の様々に異なる導電率の組織分布により,頭皮上で計測される電位分布は相当の歪を受けている。また,電流双極子モーメント(以下単にモーメント)の頭皮に垂直な成分は磁場を殆ど発生せず,脳磁図は推定する方向成分が2つであるのに対し,脳波では3つの方向成分を同時に推定しなければならない。このような比較から,3次元局在推定位置および2つの頭皮に平行なモーメント成分は脳磁図で求め,これに脳波の電位分布を加味することで残りの頭皮に垂直なモーメント成分を求めるのが最も妥当な手法であると考えた。脳波からモーメントの方向成分を推定するのに当たり採用するヒト頭部モデルは,球(脳)とそれを取り囲む3つの同心球殻(脳脊髄液,骨,頭皮)とした。 2.ソフトウェア 脳磁図と脳波のデータを同一OS上で処理できるようにデータ変換ソフトウェアを開発した。また,脳波から順方向性にモーメント成分を推定するための局在推定演算の簡易ソフトウェアを開発した。 3.脳電磁図の記録 同意を得た健常者2名を被験者として右正中神経手首部を持続時間 0.2ms, 感覚閾値の3倍の強度で定電流刺激を行い,誘発反応を21チャンネル脳波計および37チャンネル生体磁気計測装置を用いて同時記録した。 4.脳電磁図の解析および評価 今回開発されたソフトウェアによって脳電磁図としての局在推定を行い,従来の脳波,脳磁図単独での局在推定結果と比較した。正中神経電気刺激時の早期皮質誘発成分であるN20の局在推定結果は,同被験者のMR画像に投影し中心溝のエリア3bに一致していることが確認された。また,頭皮に垂直な成分も僅かに存在することが示唆され,本検査法の有効性が示唆された。今後は被験者数を増やしてさらにデータ解析を行い,臨床応用への有効性を実証することが重要と考えた。
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