研究概要 |
細胞骨格タンパク質は細胞内において様々な機能に関与していることから、その変性や劣化は細胞さらには生体の劣化などに影響を及ぼすものと考えられる。また、脂質は過酸化物を形成して、細胞内タンパク質を劣化させる可能性が大きい。 以上のような背景から本研究は、脂質過酸化物の細胞骨格タンパク質への影響を明らかにすることを目的としている。 細胞骨格タンパク質であるチューブリンはGTPase活性を発現し、重合して微小管を形成することにより細胞機能に関与している。そこで、脂質過酸化物を調製後、チューブリンを含む反応液に添加し、GTPase活性に及ぼす影響を検討した。水溶性還元剤としてアスコルビン酸、グルタチオン、L-システインを、脂溶性ビタミンとしてalpha-トコフェロール、レチノール、beta-カロチンを添加し、各種化合物を共存させた時の脂質過酸化物の影響を検討した。 Assay系チューブリン濃度1.0mg/mlで10mMリン酸緩衝液(pH7.0)中、10mM MgCl_2,0.1mM GTP、3.4M Glycerol存在下で、脂質過酸化物及び各種化合物を含んでいた。GTPase活性は生じたGDPをHPLCにて分析し測定した。脂質過酸化物はチューブリンのGTPase活性を阻害した。alpha-トコフェロールを共存させるとGTPase活性の低下が回復した。グルタチオン、アスコルビン酸では大きな変化は認められなかった。 以上の結果から、生体内で生じた脂質過酸化物が、細胞骨格タンパク質を劣化させることが明らかとなった。また、その劣化はalpha-トコフェロールによって抑制される可能性が大きい事が示された。
|