研究概要 |
【目的】近年、非均一な特性を持つ筋線維の存在が次第に明らかにされてきた。非均一な筋線維がどのような状況で発現するのかを探ることは、その生理的意義を考えるうえで大変興味深い。そこでこの問題を探る端緒として、ラットに慢性的な電気刺激と伸展固定を施して筋線維タイプの変換を促し、長軸方向の部位の違いにより筋線維組成に相違が見られるかどうかを検討した。 【方法】7〜8週齢のWistar系雄ラットを実験群(n=3)と 無処置対照群(n=8)に分けた。実験群では一方の脚を実験脚とし、坐骨神経を介した長指伸筋への慢性的な電気刺激(周波数10H_z、強度0.45〜1.70V、刺激時間10時間/日、5日間)と伸展固定とを加えた。他方の脚は偽手術のみの対照脚とした。電気刺激と伸展固定の終了翌日、長指伸筋を摘出した。筋長に対して4等分になるように、近位部、中央部、遠位部の各々で10mum厚の凍結横断切片を作製した。切片にmyosin ATPase染色(Pre-incubaton pH10.3)を施し、可能な限り数多く筋線維をカウントし、タイプI,II線維の比率を算出した。 【結果】無処置対照群では遠位部にいくに従って、タイプI線維比率が減少する傾向にあったが、有意な差ではなかった。実験群の実験脚と対照脚の各々においても、遠位部にいくに従って、タイプI線維比率が減少する傾向にあったが、3部位間で有意な差は認められなかった。また3部位のいずれにおいても、実験脚と対照脚とでタイプI線維比率に有意な差異は認められなかった。 【まとめ】今回の研究では、ラット長指伸筋に対する5日間の電気刺激と伸展固定によって、タイプII線維からタイプI線維への変換は起こらず、3部位間での筋線維組成の差は明らかにできなかった。なお走行トレーニング実験は、現在その結果を分析中である。
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