研究概要 |
運動技能獲得における時間・空間・力量情報の処理様式を検討するため,テニスのボレ-動作をシミュレートした一致タイミング課題を主課題とした実験室実験とテニスのストロークの学習を主課題としたフィールド実験を行った. 実験室実験においては,天井から吊るされた静止したボールをコンピュータディスプレイに呈示される移動刺激にあわせてボレ-動作で打つことが被験者に要求された.実験室実験の結果から,このような動作遂行に必要な処理モジュールとしていくつかのものがあることが推察され、これらのモジュールが並行的に処理されているであろう,一致タイミング課題の遂行モデルが検討された.このモデルに関しては,今年度の研究補助金で購入したコンピュータを用いて現在シミュレーションを行っているところである. また,フィールド実験においては,初心者のグランドストロークについて一般的な指導方法により,その技能を学習していく過程での動作の変容を,2台のVTRを用いたDLT法から検討を加えた.そこで明らかになったのは,特に打動作の中でも準備動作に関する部分の学習が技能獲得に大きく影響していることであった.つまり,一致タイミング課題の成績としては,時間的,空間的誤差は少なく,力量誤差が大きいように現われるが,大きな力量が要求される運動技能においては,その力量発揮のための時間的・空間的位置取りが重要になってくるということであった. しかしながら,今年度の研究ではこの準備動作に関する検討が十分行われなかったため,次年度以降特にこの局面に焦点を当てて研究をしていく必要がある.そして,実験室実験で得られた一致タイミング課題遂行のモデルにこうした動作の質的側面を加えていくことにより,実際上十分実用にたえうるモデルを提出できるものと考えられる.
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