大規模ドーム型競技場の施設展開が、地域に及ぼす経済社会的効果が分析された。 1.産業連関分析から:福岡ドームの建設費480億円から地域経済に波及する効果は570億円と試算され、初期投資の約1.12倍である。東京ドーム(約350億→約530億円:約1.51倍)と比較すると波及効果は小さい。これは地域経済圏の規模差・波及係数差によるもの。全天候型(イベント)空間・スポーツ種目拡大という特性から消費経済の広がりが見られている。 2.環境経済学から:福岡ドームの施設技術運営面での環境面での配慮は、水不足都市対策を支援する雨水利用、広域中水処理、海水利用ヒートポンプによる広域冷暖房、先進的防災、光公害や錆発生を防止するチタン屋根、そして衝撃吸収力が改善された人工芝、AI制御の効率的空調等が積極的に導入されている。多くの行政・金融支援が示された東京ドームの技術が参考にされているが、福岡ドームでは地域社会との関係が浅く、支援が行われていない。地域活性化を企図した公共的空間への地域的支援と、それらからの新たな経済社会への誘因化が検討課題となる。 3.本研究は産業連関に環境因子を取り込んだモデル作りと、さらに周辺施設との連携による経済効果創出モデルが目的であるが、このモデル化には、そこに介在する人的資本の蓄積、人材育成への投資という、質的な中間因子を考慮する必要性があり、その部分の位置づけが今後の課題となる。それはスポーツ・レジャー複合体としての関連産業とのネットワーク化、戦略的提携化の過程であろう。
|