当初、本研究では、(1)実用システム開発のための予備調査、(2)理論的研究、(3)オブジェクト指向の適用、を計画していた。結果として、本年度は(1)の研究が最も進展し、その副産物として(2)、(3)についてもさらに新たな知見を得ることができた。 (1)実用システム開発のための予備調査 本研究ではこれまでMacintoshの上に低次グラフィックス・ルーチンを使って、時相属性文法処理系を試作してきたが、本年度はより実用的な処理系を目指し、ワークステーションで最も一般的であるXtoolkitを時相属性文法から利用することを試みた。結果、Xtoolkitのwidgetは時相属性文法ときわめて親和性がよく、自然なプログラミングが可能であることが分かった。たとえば、電卓を時相属性文法だけで記述できることが分かった。また実用性を目指す立場からは、これまでの時相属性文法の時間解釈および木構造の変化機構は一部非効率であることが判明し、見直しを行った。 理論的研究 (1)の最後に述べた以外に、時相属性文法による計算方法が実はインクルメンタルな(増分的な)処理を自然に実現するものであることを新たに認識し、計算モデルの改良を行った。 (3)オブジェクト指向の適用 (1)の研究により、Xtoolkitからさらに本格的なオブジェクト指向ツールであるOSF/Motifへの適用の拡大が可能であること、およびその際の問題点が明らかになった。 以上の成果の一部は既に発表済みであり、総括論文は投稿中である。
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