これまでの形状モデルは多面体および自由曲面など、人工的で比較的単純な形状を基盤としており、近年要求が増してきている複雑な自然物体の曲面を扱えるモデルはなかった。こういった複雑な形状を扱うには位相情報および微分情報を十分に活用しなければならない。本研究では、位相不変量の一つであり、物体の臨界点の情報と密接に結び付いているホモトピー型を用いたシステムを提案した。物体形状は、特異点の指数と同じ次元を持つ胞体を張り合わせて構成できる。特異点間のグラフ的関係はレーブグラフを用いて記述する。このモデル化により、物体の位相を記号として操作することが可能になる。まず、3次元物体の表面をC^2級の2次元可微分多様体と考える。その局所座標系の上で、高さ関数を定義する。さらに、レーブグラフを次のように定義する。レーブグラフは、物体表面を等高線で表し、各等高線の連結成分を一つの点として表して得られるグラフである。モ-ス理論を用いると、物体のホモトピー型はその臨界点の指数と同じ次元を持つ胞体を張り合わせて復元できる。物体形状のモデル化はこの胞体およびその張り合わせの順序・位置を記述することによって行なう。胞体を張り合わせる順序は、レーブグラフによって示されている。モ-ス理論では、臨界点の縮退している場合が扱えないため、ハミルトン系の4次元シンプレクティック多様体を記述するためアトム・モレキュール理論を用いた拡張を行なった。縮退した臨界点に対して、アトム分解を用い、物体の切断面に現れる1次元多様体の関係をグラフ表現し、アトムのグラフ表現と対応させた。生成しようとする物体表面の上に定義されたボット積分の臨界点に対応するアトムを計算し、アトムを張り合わせて物体形状を生成するソリッド・モデラのプロトタイプをグラフィクス・ワークステーション上で完成した。
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