研究概要 |
実環境下で適切に行動できる自律ロボットの視覚系を実現するためには,従来のビジョンシステムでは環境のバリエーションに対するロバストネスが不足している.そこで,実際の生物の知覚系の持つ,ロバストネスの高いアーキテクチャを導入することが考えられる.そのようなアーキテクチャにサブサンプションという概念がある.これは,あるタスクを達成するための,知覚系から運動系に至るモジュールが,タスク毎に存在し,それらが並列・非同期的に作動するものであり,従来のロボティクスにおける,知覚系から運動系への直列・逐次的な処理構造とは異なるものである.このサブサンプションアーキテクチャを採用したロボットビジョンシステムのための数理モデルの構築を行った. 本研究は、研究対象を視覚系の最も基本的なタスクの一つであると考えられる、移動する物体を追尾する問題に限定した。しかし、本研究は対象を限定したモデルを完成させることが目的ではなく、今後モデルを視覚のより高い階層へと整合性を保ちながら拡張することを目標としたものであるため、モデルを数理的に表現し、モデルの本質的な構造を明示的に現すことを目指した。また、モデルの妥当性を検証するために、ワークステーションを用いて数値シミュレーションを同時に行った。 構築されたモデルの概要は以下の通りである.ノイズの重畳したある大きさの対象物体の画像を,ある中心位置と広がりをもつ重み関数との内積をとることで観測する.その結果に基づいて対象物体の位置を最小分散推定により推定する.最適な視点・視野の決定問題は,対象物体の位置に関する事前の情報に基づいて,物体位置の推定誤差を最小化する観測システムを構成する問題として定式化される.
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