1.成分分析…ろ過式採取器で1週間毎に採取した降水の年平均pHは4.92であり、横浜の降水(pH4.75)に比べて若干高かった。自動採取装置で採取した霧水(277試料)のpH範囲は2.89-6.23(平均値4.06)で、酸性度の極めて高い霧水(pH3.5以下)ではNO_3^-の比率が高く霧水の酸性化には硝酸の寄与が大きかった。また、霧水中にはギ酸(最高値53.8muM)、酢酸(最高値22.8muM)、アルデヒド(グリオキサールが最大で42.8muM)が高濃度に含まれていることが分かった。露水の採取は、神奈川大学研究棟屋上で発砲スチロール板に貼り付けたテフロンシート(45cm×90cm、厚さ1mm)を夜間設置して行ったが、1993年(7、8月を除く)のpH範囲は3.23〜7.12(21試料)であった。露水ではS(IV)が高濃度であり、また、露水のNO_3^-/SO_4^<2->比は低い(平均値0.30)ので、露水の酸性化は主にSO_2の液相酸化によるものと推測された。 2.酸性降下物の標高分布…大山の南・南東斜面に沿って標高400mから山頂(標高1252m)まで林外雨、林内雨(スギ、モミ)合わせてバルク採取器を42個設置し、1ヵ月後に回収した。すべての主要イオン降下量は標高とともに減少したが、H^+、NH_4^+、NO_3^-、SO_4^<2->降下量は他の成分に比べて減少率が小さいことが明らかとなった。また、スギ、モミ樹冠からのK^+、Ca^<2+>の溶脱量は同程度であり、モミ樹冠ではNH_4^+、NO_3^-の吸収があることが分かった。 3.大山における物質収支…大山の南・南東斜面に沿って4月、7月、11月にそれぞれ約30試料土壌を採取した。土壌pHに季節変化はなかったが、水溶性成分のうちCa^<2+>、Mg^<2+>、NO_3^-の濃度増加が7月に大きいことが分かった。これは、大山の土壌カラムに0.02mM(NH_4)_2SO_4溶液を流して1〜4週間室温で放置後に、NO_3^-濃度の増加が見られたことから硝化によるものと考えられた。また、土壌カラムにpH3の酸溶液を流したところ、モミの立ち枯れが著しい標高900m〜1000mの土壌でA1の溶出が早いことから、この付近では土壌の酸緩衝能力が低いことが分かった。
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