研究概要 |
1.道路沿いに生育する野生草本植物52種、栽培草本植物61種及び木本植物37種、合計150種(500個体以上)について、重窒素トレーサー法を用いてNO_2同化能力を測定し、高いNO_2同化能を有する植物をスクリーニングした。このうち、全還元態窒素中に占めるNO_2由来の窒素の割合(NO_2-N比)を求めたところ、この値が5〜11%以上のものが33種見いだされた。この結果は、NO_2由来の窒素が植物の窒素生理において重要な意義を持つことを示している。一般に、植物体内の遊離アミノ酸は約1週間で代謝回転するとされていることからこれらの植物はNO_2のみを窒素源として生育する可能性を有する、すなわち好NO_2植物の候補植物であることが示唆された。ダンドボロギクでの高い同化能を持つ変異個体を得る計画であったが十分な個体を育成することができなかった。このためイロイヌナズナ(NO_2吸収同化能は五番目に高い)を用い、NO_2暴露に対する遺伝子発現応答について調べた。 2.これまでシロイヌナズナで得られているNR,NiR遺伝子をプローブとしてノザン解析を行った結果、いずれの遺伝子ともNO_2暴露後15分で暴露前に比べ転写量の増加が認められた。その後、30分〜1時間でも転写量は暴露前より増加していたが、2時間目では暴露前よりも転写量は低下しており、以後、調べた24時間目まで低い値であった。この挙動はいわゆる硝酸誘導による遺伝子の発現パターン(硝酸誘導後30分〜4時間で転写量は増加し、それ以後は誘導前より減少する、Chengら,1990)と同様であった。NO_2分子は植物葉内で水と反応して硝酸と亜硝酸となり、細胞内へ取り込まれると考えられるが、NO_2暴露においてもNR,NiR遺伝子の発現誘導が起こることからNO_2が少なくとも一部は硝酸として取り込まれていることが確認された。
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