研究概要 |
下水処理場の生物反応槽や浄化槽等における汚水の生物学的浄化過程において、袋形動物輪虫類Philodina erythrophthalma等に代表されるろ過摂食性の有用微小動物を高密度に生息させることにより浄化効率の高度化を目指した検討をおこなった。得られた成果は以下のように要約される。 (1)これまでのフラスコスケール室内実験で得られていた輪虫類Philodina erythrophthalmaの最大個体密度は1mlあたり10,000個体程度であったが、培養基質の入れ換え等の管理を綿密におこなうことにより連続的に1mlあたり24,000個体の生息密度を維持し得ることが可能となった。 (2)輪虫類Philodina erythrophthalmaの個体密度を1mlあたり20,000個体以上に維持した場合、個体サイズが生息空間の影響等により小型化し、生物体現存量(バイオマス)としては1mlあたり10,000個体程度の場合と比較して30%程度しか増大しないことが明らかとなった。 (3)米に含有される微量生育因子を、凍結乾燥器およびロータリーエバポレーターにより分画し大量に生成して実験に供する手法を確立した。 (4)微量生育因子が有用微小動物輪虫類Philodina erythrophthalmaの増殖を有意に活性化しているか否かについて、ガラスシャーレを用いたフラスコマイクロコズム試験およびCCDカメラ入力を用いた画像解析装置の活用により短時間に簡明にバイオッセ-する手法を確立した。 (5)微量生育因子を活用して有用微小動物輪虫類Philodina erythrophthalmaの増殖を活性化させた場合においても、混合微生物生態系を構成する他の原生動物および微小後生動物に影響を及ぼすことが無いことがフラスコマイクロコズム試験において明らかとなった。
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