研究概要 |
ATP依存性プロテアーゼはタンパク質分解の際ATPを加水分解するユニークなプロテアーゼ群で,細胞内の異常タンパク質の分解にかかわっている.申請者はこの中で最も単純な分子構成を持つ大腸菌のプロテアーゼLon(プロテアーゼLa)に着目し,その構造機能相関の研究をおこなっている.今年度は,以下の結果を得た. 1)プロテアーゼLonの大量発現・精製系の確立 T7 RNA polymerase を用いた大量生産系を作成し,phosphocellulose,SephacrylS-300の2本のカラムクロマトグラフィーによる簡便な精製系を確立した.これを用いれば,短期間(4日以内)に大量の完全精製標品(1lの培養液より約10mg)を得ることができる.また,精製過程および保存溶液中に30%グリセロールを添加することによりこの酵素の安定性を向上させることができることを見いだした.短期間に高純度までに精製することとグリセロールの添加により精製標品の安定性は飛躍的に向上した.従来の報告では4℃の保存において精製標品は1日で30〜40%失活するとされていたが,申請者の精製標品は同一条件下2ヶ月間経過しても活性の低下は全く見られなかった. 2)X線結晶構造解析へ向けての結晶化の試み 上記のように完全精製プロテアーゼLonは4℃で比較的安定であることがわかったので,4℃おいてhanging drop法により結晶化をを試みた.現在までに,約1000通りの条件を試みており,球晶を得ている.さらに条件検討を進めて単結晶を得て,構造解析を行う予定である.これが成功すればATP依存性プロテアーゼの中では構造が決定された初めてのものとなる.
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