ショウジョウバエの行動周期性に影響を与える時計遺伝子periodの翻訳産物PERと類似の構造を持つ、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの(旧称PER)GTS1遺伝子産物(Gts1p)の構造と機能について以下の解析を行った。 1)クローン化したGTS1には5'上流域(-116〜-1210)に1094bpの欠失があることを、ゲノムDNAとの比較から見いだした。欠失部位の塩基配列を決定したところ、既知の転写調節配列と一致する配列は無かったが、GTS1とは逆の方向に短いORFが3つ確認された。 2)GTS1をガラトース誘導型プロモーター下流に置き大量に発現させたところ、alpha細胞とa/alpha細胞でのみ凝集が起こり、a細胞では起こらなかった。 3)凝集の有無を指標として、様々な部位を欠失させたGts1pを発現させた結果、417残基中の中央部232残基が除かれた蛋白(sGts1p)でも凝集能があることが判かった。sGts1pのN末端側には、PERを含めた高等動物の一連の転写調節因子群に見られる2量体形成に必須のPAS配列相同領域と、C末端側にはSP1やTFIID等の転写基本因子群に見られるQ-rich配列、そしてGly-Thr/Serリピートが残されている。 S.cerevisiaeの転写調節因子Tup1pのN末端部にはQ-rich配列を含むGts1pとの相同領域があり、tup1欠失変異株ではGts1p大量発現時と同様にして細胞型に依存した凝集が起こる。GTS1の過剰な発現による細胞凝集を、TUP1多コピープラスミドの導入て打ち消せるか確認すると共に、STE等の細胞特異的な遺伝子群の転写様式の変化についても今後検討を加えたい。
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