研究概要 |
1.アクチン分子のADP-リボース化部位 単量体であるG-アクチン、および重合体であるF-アクチン分子のADP-リボース化部位を検討した。この結果、ニワトリ多形核白血球アルギニン特異性ADP-リボース転移酵素はG-アクチンの場合、Arg^<206>およびArg^<28>を、F-アクチンの場合、Arg^<28>のみを修飾刷る事が判明した。 アクチン修飾の意義 上記のADP-リボース化部位Arg^<206>は、G-アクチン分子の矢じり端に相当し(Natu-re;347,37-44,1990)、この部位の修飾によりアクチン分子の重合能が抑制される事が確認された。また、この部位の修飾はアクチン結合タンパク質であるDNaseIとの相互作用を抑制し、アクチン本来の持つDNaseI阻害作用を消失させた。Arg^<28>は、アクチンN末端で、構造上フィラメント外側部分に相当し(Nature;347,44-49,1990)、ミオシンとの相互作用に重要な役割を持つ。この部位の修飾は、ミオシンとの結合を抑制しアクトミオシンの形成阻害をもたらすと予想される。このようにアクチンのADP-リボース化反応は、アクチンの機能変化をもたらすことが分子レベルで解明されつつある。 3.ニワトリ多形核白血球ADP-リボース転移酵素によるコレラトキシンの修飾 コレラトキシンは、Gタンパク質などを特異的に修飾するADP-リボース転移酵素であるが、この触媒活性を持つA_1サブユニットが、ニワトリ多形核白血球ADP-リボース転移酵素により特異的に修飾されることを見いだした。この修飾の結果、コレラトキシンの酵素活性は約4倍上昇することがin vitroで示され、コレラトキシンの生体内での作用機序に大きな影響を与える可能性が示唆された。この事実は、上記(1)、(2)と共に興味深い事実であり、発表した。
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