1.重金属でsrc遺伝子の誘導可能な細胞株の作製 まず、トリ由来のv-src遺伝子をセンスならびにアンチセンス方向にして、ヒトメタロチオネインプロモーターの下流に組み込んだプラスミドを作製した。次に、このプラスミドをpSV2neo(G418耐性遺伝子を含む)と一緒に、神経細胞分化のモデル系であるラット褐色細胞腫PC12細胞に導入し、G418存在下で培養を続け数十のクローンを得た。これらのクローンについて、重金属添加によるv-src遺伝子の発現変化をRNAベルで観察したところ、重金属の有無によりv-src mRNAの発現量が変化する細胞株がいくつか存在し、実験目的に適いそうな細胞株を得ることができた。 2.RT-PCR法によるNGF mRNAの発現変化の解析 PC12細胞においてNGF刺激によるNGF遺伝子の発現をRT-PCR法により解析した結果、 (1)mRNAレベルでは常にNGFの発現が見られること (2)NGF刺激により特異的な形のNGF mRNAが発現することが明らかになった。 現在、src可誘導細胞株を用いて、src遺伝子の発現促進または抑制によるNGF遺伝子の発現変化や形態変化などについて解析を行うと共に、NGFのpromoter領域を単離しNGFの発現調節機構について解析を進めているところであり、NGFとの関連性を含めたsrcの生理的役割についてより深く理解していく予定である。
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