研究概要 |
YTM1は必須遺伝子でありそのts変異株は非許容温度(37℃)下でG1期に増殖停止する。このYTM1タンパク質の細胞内機能を探る目的で本年度はまずこのts変異の多コピーサプレッサー遺伝子を単離した(RV11)。RV11は234アミノ酸残基よりなる予想分子量27,592の未知のタンパク質をコードしていた。RV11遺伝子の欠失変異株はts性を示し、許容温度の25℃でも細胞は異常に大きくなり長い芽を持つ異常な形態を示す。RV11タンパク質が細胞機能にとって重要な働きをしていることが示唆される。 既知の遺伝子配列を検索するとXenopus oocyteのmRNAにコードされるp25と呼ばれる機能の不明なタンパク質と全長に渡ってホモロジーが見られた。興味深いことにこのp25はXenopusからヒトまで非常よく保存されたタンパク質であり、細胞機能にとって基本的な働きをしていることが予想される。また、RV11はmalignant rabbit fibroma virus(MV)などのvirusのゲノム上に見いだされたORFにコードされるやはり機能の不明なタンパク質と高いホモロジーを示し、これら3者が細胞増殖にとって基本的な機能を有する1つの遺伝子ファミリーを形成している可能性がある。 一方、GSTYTM1融合タンパク質を酵母細胞で発現させると、YTM1タンパク質の機能を保持していることがわかった。そこでGSTYTM1を発現する酵母細胞粗抽出液よりglutathioneカラムを用いてGSTYTM1タンパク質を回収したところ、融合タンパク質の他に約27kd,20kd,12kdのタンパク質が回収された。このうち27kdのタンパク質がRV11タンパク質であるのか非常に興味深いが現在のところ不明である。
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