研究概要 |
1.コラーゲンのcDNAクローニング:組織の維持や機能に重要な役割を果たすコラーゲンの変化を明らかにするprobeとしてウシガエルコラーゲンcDNAのクローニングを行った。最終的にヒトI型及びII型コラーゲンのalpha鎖に相同性の高い2つのクローンを得た。これらをプローブとして用いたRNAブロット解析によりコラーゲンのmRNA量が変態の進行につれて、頭胴部では増加し、尾部では減少していることが判明した。これは甲状腺ホルモン投与により人為的に誘導した変態においても同様であった。また、甲状腺ホルモンと反対に変態抑制作用をもつプロラクチンを投与した個体では、頭胴部・尾部の両方でコラーゲンmRNAは増加していた。これにより甲状腺ホルモンのコラーゲンに対する作用は、頭胴部と尾部でちょうど逆であることが明らかになった。このような事例の遺伝子レベルにおける報告は現在までになされていない。同一のホルモンが部域によって正反対の作用を示す機作の解明が今後の課題となった。 2.コラゲナーゼの遺伝子クローニング:cDNAより推定された全てのエクソンを含む断片を得た。得られた断片(約4kbp)及び、その上流域(約2kbp)の塩基配列を決定した。Primer Extension法を用いて、本遺伝子の転写開始点を決定した。本遺伝子の上流域に、Sp1,AP-1結合配列及び、甲状腺ホルモンレセプターが結合し得る配列(Thyroid Hormone-responsive element-like sequence)を見いだした。既報のホ乳類の同族酵素遺伝子の上流域においては、Sp1,AP-1結合コンセンサス配列の記載はあるが、TRE-like配列の記載はなく、ウシガエルコラゲナーゼ遺伝子の1つの特徴といえる。ホ乳類には存在しない発生過程である変態期に、変態を制御する甲状腺ホルモンにより制御を受けるための両生類に特徴的な機能を持った配列である可能性が示唆される。
|