研究概要 |
多種の細胞においてアポトーシスが起きることが現象面では分かってきたが、アポトーシスの分子機構は解析が遅滞している。我々は、モデル神経細胞として分化させたヒト神経芽腫NB1細胞が分化の程度に応じて、キラー蛋白質NBCF(マウス新生仔脳由来抗癌因子:62kDa,pI9.1)への感受性が低くなるという独自の系を用い、発生過程で見られる神経細胞のプログラム細胞死のモデル系として解析した:(1)NBCFはNB1細胞に作用して6時間で既に、約180bp単位で核DNA切断を起こしていることがアザロース電気泳動で分かったが、このことは、Zn^<2+>によってDNA切断が阻害されることと併せ、転写階段への作用というよりも既存エンドヌクレアーゼ不活性前駆体への活性化作用によってリンカーDNA切断が起こると示唆された。(2)細胞溶解はNBCF作用12時間以降24時間までなお進行し続けるが、DNA切断は12時間までで既に頭打ちになり、細胞外放出されたDNA断片も細胞内残存DNAと同程度の切断度であったので、細胞死を起こすためには、一部のリンカーDNA切断で足りることを示す。(3)ヒトグリア芽腫A172細胞由来分化因子.(36kDa,pI5.5)を投与して分化させたNB1細胞は多数の神経突起を伸展すると共に、NBCF感受性が低下するが、この時分泌される蛋白性NBCF拮抗因子(43kDa,basic)を未分化NB1細胞に作用されてもNBCF拮抗効果が見られるが、この時以外にも、DNA断片化が若千見られ、必ずしも細胞死の程度と相関してないことが分かった。このことは、早期でのリンカーDNA切断の部分的修復が起こり、アポトーシスの可逆性やアポトーシス抵抗性獲得が存在することを示唆する。(4)上記の結果はwhole cellにNBCFを作用させた場合に見られたが、NB1細胞から単離した核にNBCFを作用されるとDNA切断は全く起こらず、かつ、単離核を細胞質や細胞膜と併せてもDNA切断は起こらなかったので、細胞にbuilt inされた核外因子が関与することが必須であると示された。
|